2023年
6月10日(土)~6月23日(金)
※火曜日、水曜日定休
小さき麦の花
©2022 Qizi Films Limited, Beijing J.Q. Spring Pictures Company Limited. All Rights Reserved.
6月10日(土)~6月16日(金)※火曜日、水曜日休館
(1)10:30~12:48
※予告5分
6月17日(土)~6月23日(金)※火曜日、水曜日休館
(1)12:20~14:38
※予告5分
※近隣で建築工事を行っているため、音や振動が伝わる場合があります
※上映開始時間30分以降のご入場はできません
※予約不可、当日券のみ(イベント時は予約を受け付ける場合あり)
※ご来館の際はこちらをご一読ください
「ご来館時のお願い」
6月3日~6月30日:スケジュールPDFファイルはこちら
2011年、中国西北地方の農村。貧しい農民ヨウティエ(ウー・レンリン)と障がいのある内気なクイイン(ハイ・チン)。互いに家族の厄介者だったふたりは、見合い結婚。やがて、互いを慈しみ、力を合わせ、作物を育て、質素な家を作り、慎ましくも日々を生きるのだが、自然の猛威や変わりゆく時代の波にさらされる……。ベルリン国際映画祭の星取りでは驚異の4.7点(5点が満点)をマークし、金熊賞最有力と絶賛されるも無冠。しかし、中国で公開されると、レビューサイトでも本年度中国映画ベスト1の評価を得てじわじわ広がり、公開後2ヶ月経ってからTikTokが火付け役となり、若い世代を中心に興行収入トップに躍り出る大ヒットを記録。<奇跡の映画>とまで呼ばれたのが、本作『小さき麦の花』である。
監督は、長編4作目の『僕たちの家に帰ろう』(2014)が日本公開されているリー・ルイジュン。『白鶴に乗って』(2012)がベネチア映画祭オリゾンティ部門、『路過未来』(2017)がカンヌ映画祭ある視点部門、そして本作がベルリン映画祭コンペ部門に選ばれ、世界3大映画祭でキャリアを重ねてきた期待の監督だ。近年、ビー・ガン(『ロング・デイズ・ジャーニー この世の涯てへ』)やグー・シャオガン(『春江水暖〜しゅんこうすいだん』)など中国新世代監督が世界から注目されてきたが、「(本作には)第5世代の名作の痕跡を見ることができる。あるいは、ジャ・ジャンクーの記憶に残る映画と関連付けることもできる。『小さき麦の花』は、これら著名な現代中国の名作との比較に値する」(International Cinephile Society)と評され、新たな名作とも称賛されている。
(上映時間:133分)
2023年
6月17日(土)~6月30日(金)
※火曜日、水曜日定休
ライフ・イズ・クライミング!
©Life Is Climbing 製作委員会
6月17日(土)~6月23日(金)※火曜日、水曜日休館
(1)10:30~12:04
※予告5分
6月24日(土)~6月30日(金)※火曜日、水曜日休館
(1)10:30~12:04
※予告5分
※すべての回バリアフリー日本語字幕版上映
※近隣で建築工事を行っているため、音や振動が伝わる場合があります
※上映開始時間30分以降のご入場はできません
※予約不可、当日券のみ(イベント時は予約を受け付ける場合あり)
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出会いは2001年。「右手、1時半、遠め。右、右、右!」、遠くから聞こえる相棒・ナオヤの声を自分の目のように頼り、8の字結びのロープでつながり、命をゆだねて岩を登るクライマー・コバ。世界選手権4連覇を成し遂げたふたりが、次に目指したのは、ユタ州の大地に聳え立つ真っ赤な砂岩フィッシャー・タワーズの尖塔に立つこと。この、とんでもない冒険の結末は? そして、その時コバの目はどんな景色を見るのだろうか?
想像を超える大自然、何億年もかけて作り上げられたダイナミックな岩山の絶景、人生を変えた恩人との再会。そこにあるのは、とびきりポジティブな心と溢れる笑顔、そして、ゆるぎないふたりの絆。旅の最終目的地に到着した時、観るもの全ての心に虹が架かるだろう。
メガホンを取ったのは、本作が映画初監督作品となる中原想吉。2016年にTV番組「ザ・ノンフィクション」でコバを密着取材。その後、交流を深め、映画制作にいたる。主題歌は、MONKEY MAJIKの「Amazing」。コバのクライミングに衝撃をうけ、映画をイメージして完成させた楽曲。出演者、監督、音楽、すべてが見えないチカラに引き寄せられるように結び合って完成した。
(上映時間:89分)
2023年
6月17日(土)~6月30日(金)
※火曜日、水曜日定休
窓辺にて
© 2022「窓辺にて」製作委員会
6月17日(土)~6月23日(金)※火曜日、水曜日休館
(1)14:50~17:18
※予告5分
6月24日(土)~6月30日(金)※火曜日、水曜日休館
(1)12:20~14:48
※予告5分
※近隣で建築工事を行っているため、音や振動が伝わる場合があります
※上映開始時間30分以降のご入場はできません
※予約不可、当日券のみ(イベント時は予約を受け付ける場合あり)
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話題作を次々と連発する稀代の映画監督・今泉力哉。今泉監督と言えば、一筋縄ではいかない繊細な恋人たちの心の機微を描き、その恋愛観が熱烈に支持されてきた。今泉監督が描くオリジナルラブストーリーには定評があり、あらゆる映画ファンが心待ちにしている。
そんな今泉監督の17作目となる完全オリジナル作品『窓辺にて』は、今泉組に初参加となる唯一無二の存在感を放ち観客を魅了し続ける稲垣吾郎を迎え、稲垣は妻について「ある悩み」を持つフリーライター市川茂巳を演じる。今泉監督が書き上げた巧みな会話劇と、稲垣により繊細に構築された演技とスクリーンで際立つ華やかな存在感。さらに今泉ワールドの特徴でもある<等身大の恋愛模様>に加え、これまで以上に<好きという感情そのもの>について深く掘り下げた、美くてちょっぴり可笑しい大人のラブストーリーとなった。
稲垣と共に今泉ワールドを構築するのは、市川の妻・紗衣役に儚げな存在感で観客を魅了し続け、『母性』の公開が控える中村ゆり、高校生作家・久保留亜役に『ホリックxxxHOLiC』など多数の話題作に引っ張りだこの玉城ティナ。さらに、市川の友人でプロスポーツ選手の有坂正嗣役に今泉監督作の常連で『街の上で』で主演を務めた若葉竜也、有坂の妻・ゆきの役に幅広い役柄でキャラクターを演じ分ける『架空OL日記』の志田未来、そして紗衣と浮気している売れっ子小説家・荒川円役に『裸足で鳴らしてみせろ』の今後が期待される若手俳優の佐々木詩音が抜擢された。個性的な俳優陣が今泉組に集結し、濃密でほろ苦い愛についての群像劇を繰り広げる。さらに、映画『空のレストラン』の主題歌などを担当したスカートが主題歌を手掛け、ノスタルジー溢れる温かなポップスが鑑賞後感を特別なものへと誘う。劇伴は、抒情派エレクトロ・ダブ・バンドの、あらかじめ決められた恋人たちへの池永正二が担当する。
(上映時間:143分)
2023年
6月24日(土)~6月30日(金)
※火曜日、水曜日定休
ソウル・オブ・ワイン
©2019 – SCHUCH Productions – Joparige Films – 127 Wall
6月24日(土)~6月30日(金)※火曜日、水曜日休館
(1)15:10~16:57
※予告5分
※一週間限定上映
※近隣で建築工事を行っているため、音や振動が伝わる場合があります
※上映開始時間30分以降のご入場はできません
※予約不可、当日券のみ(イベント時は予約を受け付ける場合あり)
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ロマネ=コンティをはじめとする世界最高峰のワインを生み出すワイン愛好家の聖地、フランス、ブルゴーニュ地方。1年を通じて名だたる畑を守る生産者たちの、普段は見ることのできない貴重な舞台裏に密着。
彼らがワインとテロワール(土壌や生育環境)について語り、最高級のワインが生まれる貴重なプロセスを、フレデリック・ワイズマン監督のドキュメンタリーを思わせる眼差しで、詩的で芸術的な映像にのせて映し出す。
冬から春、収穫を経て、ワインができるまでを体験し、何世紀も繰り返され、またこれからも黙々と繰り返されるであろう日常をじっと見つめるうちに、自然の真理や哲学を見るがごとき感覚が生まれるだろう。
農薬や除草剤を使わず、自然のままの有機農法やビオディナミ農法でワイン造りをするブルゴーニュの生産者たち。彼らは土地の所有者ではなく、次世代へとその遺産を受け継ぐ番人として、何世紀もの間、ワイン畑を守り、その技と知恵、哲学をつないできた。
生産者から樽職人、ソムリエまでワイン界を代表する一流のスペシャリストたちが、その香り高く味わい深い世界の導き手となり、最後はワイン好きをもハッと震わせる境地にまでたどり着かせる。
ワインの「真髄」に触れ、ワインをますます愛さずにはいられない至極の体験があなたを待っている。
(上映時間:102分)
2023年
7月1日(土)~7月7日(金)
※火曜日、水曜日定休
奈落のマイホーム
大都市ソウルの中心で、地盤沈下により突如現れた巨大陥没穴《シンクホール》。それは、一瞬にして巨大なマンションをも飲み込んでしまう。建物に取り残されていたのは、ようやくマイホームを手に入れたサラリーマンやおせっかいな迷惑隣人など、日常生活では決して相いれない面々。彼らは、この未曾有の緊急事態からサバイブできるのか!?
監督を務めるのは、108階建ての超高層ビルの大火災を描き、観客動員518万人を突破した『ザ・タワー 超高層ビル大火災』や2,500mの深海で繰り広げられるパニックアクション『第7鉱区』を手掛けた韓国ディザスターの名手、キム・ジフン。『バトル・オーシャン/海上決戦』、『テロ、ライブ』などを手掛けたVFXチームを従え、圧倒的破壊力ある映像を観客につきつける。
この危機から脱出しようと必死にもがく普通の人々を演じるのは、『毒戦 BELIEVER』の怪演も記憶に新しいチャ・スンウォンや、「応答せよ」シリーズなど数多くのドラマ、映画で活躍するキム・ソンギュン、『探偵なふたり:リターンズ』でのコミカルな演技が高い評価を得たイ・グァンス、Netflixの人気ドラマ「キングダム」の若き王妃役で鮮烈な印象を残したキム・ヘジュンら、実力派俳優陣。当初は呆れつつも、いつしか応援したくなる個性あふれるキャラクターたちを巧みに演じている。
韓国では都市部を中心に年間900件発生しているともいわれるシンクホール。これは明日、あなたにも起こりうる、他人ごとではない大災厄!
(上映時間:114分)
2023年
7月1日(土)~7月14日(金)
※火曜日、水曜日定休
ハマのドン
上映時間未定
2019年8月、“ハマのドン”こと藤木幸夫が横浜港をめぐるカジノ阻止に向けて立ち上がった。御年91歳。地元政財界に顔が効き、歴代総理経験者や自民党幹部との人脈、田岡一雄・山口組三代目組長ともつながりがあり、隠然たる政治力をもつとされる保守の重鎮だ。
その藤木が、カジノを推し進める政権中枢に対して、真っ向から反旗を翻した。今の時代が、戦前の「ものを言えない空気」に似てきたと警鐘を鳴らし、時の最高権力者、菅総理と全面対決した。
決戦の場となったのは横浜市長選。藤木が賭けたのは、住民投票を求める署名を法定数の3倍をも集めた市民の力だった。裏の権力者とされる藤木が、市民とカジノ反対の一点で手を結び、時の総理と官房長官が推し進めた「カジノ誘致」の国策阻止を成し遂げた。
パーソナルな話題があふれるこの情報社会の中で、本来の保守とはなにか、人心を動かすとはどういうことか、社会のありよう、メディアの在り方、民主主義とはなんなのか。
本作を手掛けた監督はテレビ朝日「報道ステーション」プロデューサーを務めた松原文枝。プロデューサーは「テレメンタリー」の江口英明と「民教協」の雪竹弘一。ナレーションにはリリー・フランキーが加わった。藤木が市民と手を取り合い、カジノ誘致を覆したその軌跡を追うとともに、市民の声が届かない今の時代の政治権力をどう見るのか。政治を諦め無関心となる間に、国の根本となる重要政策の転換がなされ、手遅れの事態となる。
藤木の闘いは今の政治を変えて行くために何が必要なのかーここには一条の光がある。
(上映時間:100分)
2023年
7月1日(土)~7月14日(金)
※火曜日、水曜日定休
ぼくたちの哲学教室
© Soilsiú Films, Aisling Productions, Clin d’oeil films, Zadig Productions,MMXXI
上映時間未定
北アイルランド、ベルファストにあるホーリークロス男子小学校。ここでは「哲学」が主要科目になっている。エルヴィス・プレスリーを愛し、威厳と愛嬌を兼ね備えたケヴィン校長は言う。「どんな意見にも価値がある」と。彼の教えのもと、子どもたちは異なる立場の意見に耳を傾けながら、自らの思考を整理し、言葉にしていく。授業に集中できない子や、喧嘩を繰り返す子には、先生たちが常に共感を示し、さりげなく対話を持ちかける。自らの内にある不安や怒り、衝動に気づき、コントロールすることが、生徒たちの身を守る何よりの武器となるとケヴィン校長は知っている。かつて暴力で問題解決を図ってきた後悔と挫折から、新たな憎しみの連鎖を生み出さないために、彼が導き出した1つの答えが哲学の授業なのだ。
北アイルランド紛争によりプロテスタントとカトリックの対立が長く続いたベルファストの街には「平和の壁」と呼ばれる分離壁が存在する。1998年のベルファスト合意以降、大まかには平和が維持されているが、一部の武装化した組織が今なお存在し、若者の勧誘に余念がない。争いの記憶は薄れやすく、平和を維持するのは簡単ではない。その困難はケヴィン校長と生徒たちの対話の端々にも現れる。宗教的、政治的対立の記憶と分断が残る街で、哲学的思考と対話による問題解決を探るケヴィン校長の大いなる挑戦を映画化したのは、アイルランドで最も有名なドキュメンタリー作家のナーサ・ニ・キアナンと、ベルファスト出身のデクラン・マッグラの二人。およそ2年に及ぶ撮影期間中にパンデミックが起こり、インターネット上のトラブルという新たな問題が表面化するなど、子どもをめぐる環境の変化も捉えている。ケヴィン校長と生徒たちによる微笑ましくも厳粛な対話がニコラ・フィリベールの『ぼくの好きな先生』を彷彿とさせ、国内外の映画祭で多くの賞を受賞した注目作!
(上映時間:102分)
2023年
7月8日(土)~7月14日(金)
※火曜日、水曜日定休
アシスタント
名門大学を卒業したばかりのジェーンは、映画プロデューサーという夢を抱いて激しい競争を勝ち抜き、有名エンターテインメント企業に就職した。業界の大物である会長のもと、ジュニア・アシスタントとして働き始めたが、そこは華やかさとは無縁の殺風景なオフィス。早朝から深夜まで平凡な事務作業に追われる毎日。常態化しているハラスメントの積み重ね……しかし、彼女は自分が即座に交換可能な下働きでしかないということも、将来大きなチャンスを掴むためには、会社にしがみついてキャリアを積むしかないこともわかっている。ある日、会長の許されない行為を知ったジェーンは、この問題に立ち上がることを決意するが――。
ニューヨーク・タイムズスクエアの裏手にある薄汚れたオフィスで、18日間という短期間で撮影された本作は、サンダンス・ベルリンを始めとした世界中の映画祭や各メディアによって高く評価された。
『ジョンベネ殺害事件の謎』(2017)で知られるドキュメンタリー映画作家のキティ・グリーンは、2017年に巻き起こった #Me Too運動に自身初の劇映画の題材を見出し、今日の職場における大きな問題をフィクションの形で掘り下げた。英語で匿名の女性を指す “Jane Doe” に由来するジェーンというキャラクターは、数百にも及ぶ労働者へ対して行われたリサーチとインタビューによって監督が得た膨大な知見、とりわけ女性の痛みや混乱の経験から形成されている。そして、ヒエラルキーの末端で働く人々の代弁者でもあり、現代のジャンヌ・ディエルマンとも言えるジェーンを全身全霊で演じたのは、いま最もエキサイティングな若手俳優として急速に地位を確立しているジュリア・ガーナー。
一つの確信によって、思いもよらない自らの立場が明らかになるとき、彼女はどのような選択をするのか――静かな衝撃に打ちのめされる87分。
(上映時間:87分)
2023年
7月15日(土)~7月21日(金)
※火曜日、水曜日定休
RRR
©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.
上映時間未定
※イベントは終了しました。ありがとうございました。
マサラ上映決定
7月16日(日)
数々の興行新記録を打ち立て、全世界に“バーフバリ旋風”を巻き起こしてインド映画の歴史を変えた映画史上最大の叙事詩にして、もはや神話ともいうべき伝説の2部作『バーフバリ 伝説誕生』と『バーフバリ 王の凱旋』。その創造神S.S.ラージャマウリ監督による全宇宙待望の最新作がついに完成した。
舞台は1920年、英国植民地時代のインド英国軍にさらわれた幼い少女を救うため、立ち上がるビーム(NTR Jr.)。大義のため英国政府の警察となるラーマ(ラーム・チャラン)。熱い思いを胸に秘めた男たちが”運命”に導かれて出会い、唯一無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに、それぞれの”宿命”に切り裂かれる2人はやがて究極の選択を迫られることに。
(上映時間:179分 )
2023年
7月15日(土)~7月28日(金)
※火曜日、水曜日定休
青いカフタンの仕立て屋
上映時間未定
2021年、日本初公開されたモロッコ長編映画『モロッコ、彼女たちの朝』(19)は、異国情緒漂うカサブランカの旧市街を舞台に、臨月の未婚女性というモロッコのタブーを取り上げた衝撃のストーリーで大ヒットを記録した。ホブスにムスンメン、ルジザなど、モロッコの伝統パンの登場もパン好きの間で大きな話題になった。モロッコの知られざる一面を日本に伝えたマリヤム・トゥザニ監督が、最新作で取り上げたのは民族衣装のカフタンを作る仕立て屋だ。カフタンとは結婚式や宗教行事などフォーマルな席に欠かせない伝統衣装で、コードや飾りボタンなどで華やかに刺繍されたオーダーメイドの高級品だ。母から娘へと受け継がれる着物のような存在だが、安価で手早く仕上がるミシン刺繍が普及した現在、手間暇かかる手刺繍をほどこすカフタン職人は貴重な存在となっている。トゥザニ監督は伝統を守る仕立て職人の指先にレンズを向け、滑らかなシルク地に刺繍する繊細な手仕事をクローズアップ。消えゆく伝統工芸の美しさを伝える一方で、本作では男性の生きづらさを生むタブーに踏み込み、前作以上に挑発的なラストとした。戒律と法律が異性愛しか許さないモロッコ社会には、真の自分を隠して生きる人々がいる。伝統を守る仕事を愛しながら、自分自身は伝統からはじかれた存在と苦悩する1人の男、ハリムとその妻のミナが、本作の主人公だ。前作のリサーチ中に出会った美容師の男性からインスピレーションを受けたと明かすトゥザニ監督は、愛したい人を愛し自分らしく生きる美しい物語に昇華させた。
センシティブな問題を国際社会に紹介した本作は、2022年カンヌ国際映画祭「ある視点部門」に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞。さらに、2023年米アカデミー賞®モロッコ代表として国際長編映画賞のショートリスト(最終候補15本)にも選出されるなど、国際的に高い評価を得ている。
出演は『モロッコ、彼女たちの朝』(19)で、最愛の夫の死に沈むアブラを演じたルブナ・アザバル。死期迫るミナを体現するために過酷なダイエットを行い、最期の瞬間まで夫に愛と勇気を捧げる妻を熱演する。ミナとの別れを受けとめきれずに立ちすくむハリムには、『迷子の警察楽隊』(07)のサーレフ・バクリ。内なる情熱と本心を隠す悲しみを、吸い込まれるような瞳で訴えかける。複雑な夫婦の愛にさざ波を起こす助手のユーセフには、本作が映画初出演のアイユーブ・ミシウィ。
(上映時間:122分)
2023年
8月12日(土)~8月18日(金)
※火曜日、水曜日定休
マリウポリ
7日間の記録
2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻は全世界に衝撃を与えた―。1991年のウクライナ独立、そして2013年から2014年のマイダン革命に端を発し、ウクライナの東部に位置するドンバス地方では、親ロシア分離派とウクライナ系住民との紛争が絶え間なく続き今日に至っている。
そのウクライナ東部ドンバス地方のマリウポリは、ロシア軍に侵攻、包囲され、砲撃によって街は廃墟と化した。眩しい日差しの下、人っ子一人見当たらない瓦礫の街の風景は、人類すべてが滅亡してしまったかのようだ。夕暮れ時、建物の割れた窓から見える地平線には炎と噴煙が立ち昇り、連射される曳光弾の光跡と共に雷鳴のような砲撃音が轟いている―。
リトアニア出身のマンタス・クヴェダラヴィチウス監督は、2016年にすでにマウリポリを訪れ、同地の人々の日々の営みを記録した『Mariupolis』(日本未公開)を発表し、高い評価を得ていた。本作はその続編ともいうべき作品である。クヴェダラヴィチウス監督は、侵攻間もない3月に現地入りし、破壊を免れた教会に避難している数十人の市民らと生活を共にしながら撮影を開始。だが、数日後の3月30日、同地の親ロシア分離派勢力に拘束され、殺害された。助監督だった監督のフィアンセによって撮影済み素材は確保され、遺体とともに帰国。クヴェダラヴィチウス監督の遺志を継ぎ、製作チームが完成させた作品は、直ちに5月の第75回カンヌ国際映画祭で特別上映され、ドキュメンタリー審査員特別賞を受賞。2022年末にはヨーロッパ映画賞・ドキュメンタリー賞を受賞した。
(上映時間:112分)
2023年
8月13日(日)~8月25日(金)
※火曜日、水曜日定休
EO イーオー
© 2022 Skopia Film, Alien Films, Warmia-Masuria Film Fund/Centre for Education and Cultural Initiatives in Olsztyn, Podkarpackie Regional Film Fund, Strefa Kultury Wrocław, Polwell, Moderator Inwestycje, Veilo ALL RIGHTS RESERVED
上映時間未定
戦後のヨーロッパ映画界で最も評価の高い映画監督の一人であるイエジー・スコリモフスキ。本作は第75回カンヌ国際映画祭では審査員賞・作曲賞2部門を受賞、全米映画批評家協会賞では外国語映画賞/撮影賞の2部門を受賞し、アカデミー賞国際長編映画賞ノミネートを果たした。
スコリモフスキ監督の7年ぶりの新作としてポーランドとイタリアで撮影されたこの映画の主人公は“ EO(イーオー)”という名前のロバ。監督自身が「私が唯一、涙を流した映画」と語る、ロベール・ブレッソンの『バルタザールどこへ行く』にインスパイアされた本作。ミハウ・ディメクによる臨場感あふれる見事なカメラワークと、世界の映画賞を席巻中のパヴェウ・ミキェティンによる印象的な音楽に連れ出され、我々観客はEOの旅を見守りつつも、ある時はEOの目線で予期せぬ荒波を潜り抜けることになる。
人間のおかしさと愚かさを、全くの別視点から体感するような無比の映像体験には、“鮮烈”“近年の映画には希少な大胆さ”と、その革新性とオリジナリティに多くの称賛が寄せられている。
サーカス団のパートナー、カサンドラの元を離れ、ポーランドのサッカーチーム、どこか影のあるイタリア人司祭ヴィトー、そして伯爵夫人らと出会うEO。彼の目から見える世界、そしてそこから我々に投げかけるものとは―。
(上映時間:88分)
上映期間未定
零落
©2023浅野いにお・小学館/「零落」製作委員会
上映時間未定
青春漫画の金字塔「ソラニン」を放ったカリスマ漫画家・浅野いにおの新境地にして衝撃の問題作を完全映画化!監督は『無能の人』から10作品目となる、竹中直人。主人公の元人気漫画家・深澤薫を演じる斎藤工が、屈折した人物像にリアルな魂を宿す。“猫のような目をした”風俗嬢・ちふゆに息を吹き込むのは、趣里。敏腕漫画編集者で深澤の妻・町田のぞみをMEGUMIが演じ、さらには玉城ティナ、安達祐実など個性的なキャストがスクリーンを彩る。永積崇(ハナレグミ)、しりあがり寿、大橋裕之…とバラエティ豊かな著名人も多数出演。主題歌は、強烈なインパクトを残すフリーライター役で出演もする志磨遼平が書き下ろした、ドレスコーズの「ドレミ」。
果たして、漫画を描きつづけることは醜悪に誰かを傷つける、悪魔の所業なのか? そんなおそろしい問いかけすら観る者に突きつける深澤の鋭意な葛藤は、表現者ならいつかは必ず誰もが直面する、通過儀礼のように普遍的な魂のジレンマである。
その不協和音の奏でる痛みに七転八倒しながら堕ちてゆく姿が、深澤のようにぶざまで、不器用で、愚かで、カッコ悪くて、見苦しくて、不憫であればあるほど、その人間臭い生きざまは途方もなく滑稽で、愛おしい――。
息苦しい21世紀の今を生きるすべての表現者に贈る、哀しくも美しい物語が誕生した。
8年間の連載が終了した漫画家・深澤薫は、自堕落で鬱屈した空虚な毎日を過ごしていた。SNSには読者からの辛辣な酷評、売れ線狙いの担当編集者とも考え方が食い違い、アシスタントからは身に覚えのないパワハラを指摘される。多忙な漫画編集者の妻ともすれ違い、離婚の危機。世知辛い世間の煩わしさから逃げるように漂流する深澤は、ある日“猫のような目をした”風俗嬢・ちふゆと出会う。堕落への片道切符を手にした深澤は、人生の岐路に立つ……。
(上映時間:128分)
上映期間未定
ナナメのろうか
本年6月に深田隆之監督初の劇場公開作『ある惑星の散文』が上映され、大きな話題を呼んだ。
そして早くも最新作『ナナメのろうか』が公開決定! 姉妹関係の変化を描く珠玉の44分。
前作『ある惑星の散文』は作家性や芸術性の高さが評価される映画祭での上映が相次いだ。フランスのベルフォール国際映画祭やアメリカポートランド美術館で上映され、その豊かな映画表現とロケーションから着想を得たユニークな映画作りは観客の注目を集めた。最新作では44分という短い上映時間の中に2つの側面を持つ映画を見事に生み出した。オルタナティブな映画表現を追求する深田隆之が最新作でもユニークな映像世界を紡ぎ出す。
改装される予定の祖母の家に来た姉妹、聡美と郁美。妹の郁美は妊娠し、シングルマザーになる決意をしていた。2人は家に残された物を片付け始めるが、昔遊んだおもちゃ箱を見つけ、こどもの頃のように遊び始める。しかし、お腹の子どもをめぐってお互いの溝が露わになり、2人は家の中ですれ違い、会えなくなってしまう。嵐の夜の中、姉妹は暗闇の中でお互いを呼び合うのだった。
(上映時間:44分)